大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和46年(レ)437号 判決 1973年5月01日

控訴人 遠藤馨

被控訴人 東京都文京区

右代表者区長 尾川徹郎

右指定代理人東京都事務吏員 浦田光雄

<ほか二名>

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

(控訴人)

原判決を取消す。

被控訴人は控訴人に対し金八万円を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決

(被控訴人)

主文一、二項と同旨の判決

第二主張

請求原因

一1  控訴人は、昭和四一年四月三〇日東京都板橋区から同都文京区雑司ヶ谷一二〇番地東京教育大学雑司ヶ谷分校寮に住所を移転したので、同日被控訴人区役所音羽出張所(以下音羽出張所という)に対し転入届を提出したが、その際控訴人が右届出書の上欄の届出人欄(以下上欄という)に「教育大学内」との方書(以下方書という)を付して右新住所を記入し、被控訴人により右住所に従った住民票が作成された。

2  また、控訴人は、右同日、同時に国民年金、国民健康保険、補充選挙人名簿関係の各届書を提出したが、そのいずれにも控訴人の住所として右方書を記入していたうえ、同年五月二日音羽出張所に提出した住民票更正申出書にもその住所欄の住所には右方書を記入した。

二  しかして、被控訴人は、同月一〇日ごろ控訴人の前住区である板橋区に対して控訴人の転入通知書を作成、交付したが、その際、前記の如く控訴人の新住所が控訴人提出の各届書によりいずれもその方書部分まで明らかになっていたにもかかわらず、右転入通知書の控訴人の住所欄には右方書を記載しなかった。この場合、音羽出張所係員としては、転入通知書の記載と上欄の記載を照合し、或いは前記その他の各届書の住所欄の記載を見るならば、当然転入通知書に方書の脱漏のあることを発見し、これを補充訂正することが可能であり、かつこれを訂正すべきであったにもかかわらず、これを怠った過失がある。

三1  ところで、板橋区長は、昭和四一年六月一五日控訴人に対して昭和四一年度の納税通知書を郵便で発送したが、控訴人の住所を前記転入通知書の方書のないそれに従って記載したため、その通知書は控訴人に送付されずに同区長に返送された。

2  そこで、同区長は、同年九月一七日控訴人に対して公示送達を以って右納税通知書の送達をなした。

四  以上のような経過で控訴人は、納税通知書を受取ることができなかったため、昭和四一年度特別区民税等を同年七月一五日までに板橋区に納税すべきであったのに同期日までにこれを納税する機会を失い右期限内に納税した場合に受領し得た金七〇円の報奨金を失う一方、同区長から同区の掲示場に控訴人に対する納税のための督促通知書を貼布するという不名誉な処分を受け、かつ、同区役所の帳簿に督促状や催告状を発送した旨を記載されるなど控訴人の名誉を毀損された。

五  以上によれば、控訴人が前記の如く金七〇円の報奨金の受領権を失ない、名誉を毀損されるにいたった原因は公務員である被控訴人の職員の過失にある。

よって、控訴人は、国家賠償法一条および民法七一五条に基づき被控訴人に対し右不法行為による損害として、右喪失報奨金額七〇円および名誉毀損の慰藉料を合算した金八万円の支払を求める。

請求原因に対する認否と被控訴人の主張

一  請求原因一の1のうち、控訴人が転入届の上欄に方書を記入したこと、同日作成された住民票に方書が記入されたことは否認し、その余の事実は認める。

二  同一の2のうち、控訴人が転入届提出の当日に、国民年金、国民健康保険、補充選挙人名簿関係各書類の提出をしたことを否認し、その余の事実を認める。控訴人が国民年金にかかる住所変更届を提出したのは同年五月九日、国民健康保険被保険者資格取得届を提出したのは同年八月二九日である。

三、同二のうち、被控訴人から板橋区に対して交付された控訴人の転入通知書に方書が記載されていなかったことを認め、その余の事実は否認し、被控訴人に過失があるとの主張をつぎの1ないし4のとおり争う。

1  控訴人は、昭和四一年四月三〇日板橋区に対して転出届を提出したが、その際転出先の住所について本件方書を記載しなかったため、同区から交付を受けた転出証明書にも右方書は記載されていなかった。

2  控訴人は、同日右転出証明書を添付して音羽出張所に本件転入届を提出したのであるが、その際も、同届下欄の転入通知欄(以下下欄という)に方書のない住所を記入していた。しかして、音羽出張所の職員は、同日郵便はがきに複写機で右下欄の記載部分を複写して板橋区に対する本件転入通知書を作成した。転入通知書の右作成方法は、転記方法に比して確実性のあるものであり、住民登録法の趣旨にも反せず被控訴人においてのみならず、他の市区町村においても行なわれているものである。したがって、方書のない右転入通知書が作成されたのは、専ら控訴人の過失によるものであり、被控訴人の右職員に過失はない。

3  そもそも転入通知書は、前住地における転出者の住民票を消除し、二重登録を防止するとともに住民の不利益を除却し、あわせて行政上の支障をなからしめることを目的として作成されるものであり、右通知は速かに前住地になされることが肝要である。本件の場合控訴人の前住地である板橋区に提出されていた前記転出届と、音羽出張所の職員により作成された前記転入通知書の住所欄の記載内容は同一であったのであるから、板橋区長が控訴人の住民票を消除するについて右通知書の住所欄に方書が欠けていても何らの支障になるものではない。したがって、仮に前記転入届の上欄に、控訴人住所の方書が記載されていたにもかかわらず被控訴人の職員がこれを見落したとしてもそれは右通知書作成にあたっての過失ではない。

4  被控訴人の職員は、控訴人が同年五月二日に提出した前記住民票更正申出書に記載されていた方書に従って住民票独自の目的に副うべく控訴人の住民票と控訴人がすでに提出していた本件転入届の上欄に右方書を追記したまでである。当時下欄を複写した転入通知書は、すでに四月三〇日に作成され、右五月二日には被控訴人の音羽出張所から本庁舎に選ばれており、更に同月四日都庁内の板橋区役所あて文書交換箱に投入され、同月六日同区使送者が自区に持参したという経路をとっている。したがって、方書に関する右追記事実を特別の措置をとってまで板橋区に通知すべき法的義務はない。また、被控訴人には右通知書を作成する際に国民年金保険、国民健康保険、補充選挙人名簿に関する届書の住所欄をも照合すべき法的義務もない。

四  同三1、2のうち、板橋区の納税通知書が控訴人の転入通知書の記載に従って発送されたとの点をつぎのとおり否認し、その余は不知。すなわち、板橋区は、控訴人に対する前記納税通知書を発送するに際しては、同年五月一六日から二一日にかけて独自に同区の転出証明書交付台帳によって調べた控訴人の転出先住所をその宛先としたのであり、被控訴人からの前記転入通知書は同月二四日まで未処理のまま放置されていた。右交付台帳は、控訴人が同区に提出した転出先住所に方書を記載しなかった前記転出届によって作成されたものである。

五  同四の事実のうち因果関係を否認し、その余は不知。すなわち、控訴人は、同年五月二六日ごろ前記分校の寮生の自治総会において退寮の決議を受け、同月三〇日から右分校寮に居住しておらず、寮の管理人も控訴人の居住先を全く知らなかった。被控訴人は、同年六月二〇日から七月上旬にかけて管内住民の実態調査をしたときに右事実が判明したので、同年七月六日に控訴人の住民票を転出先不明として職権消除した。したがって、仮に控訴人に対する前記納税通知書が方書の住所宛に送付されたとしても、右通知書は、名宛人の所在が不明であるとして返送されたはずである。

六  同五の事実ならびに主張を争う。控訴人は、本件公示送達によって心証を害されたかもしれないが、それは、単なる主観的名誉感情に過ぎず、それによって控訴人に対する社会的評価が低下したとは考えられない。

被控訴人の主張に対する控訴人の認否

被控訴人の主張三の1、2の事実は認めるが被控訴人に過失がないとの主張を争い、同3の主張および同4の事実ならびに主張も争う。同四の事実は否認し、同五のうち、控訴人がそのころ退寮処分を受けたことを認めその余の事実を否認する。

控訴人が昭和四一年四月三〇日に板橋区に提出した転出届の転出先住所欄に方書を記入しなかったのは同区の職員の指示に従った結果であった。しかして、控訴人は、音羽出張所に前記転入届を提出する際にその下欄にも方書を記入しようとしたが、同出張所の職員が控訴人に対して板橋区から交付された前記転出証明書に記載どおりの新住所を記入することを強請したため、右方書を記入することができなかった。

第三証拠≪省略≫

理由

一1  控訴人が昭和四一年四月三〇日に東京都板橋区から文京区雑司ヶ谷一二〇番地東京教育大学雑司ヶ谷分校寮に住所を移転したこと、同日控訴人が板橋区に対して転出届を被控訴人の音羽出張所に対して転入届をそれぞれ提出したこと、控訴人が右転出届および右転入届下欄に右転居先の新住所として方書のない住所名(すなわち、「文京区雑司ヶ谷一二〇」とのみ。)を記入したことはいずれも当事者間に争いがない。

2  ≪証拠省略≫によると、控訴人は、同日板橋区から転出証明書の交付を受け、これを添付したうえで音羽出張所において右転入届をなしたが、その際右転入届の上欄にも転入先の新住所として方書のない住所を記入したこと、ところで、その際控訴人は、右下欄の戸籍筆頭者欄に遠藤一之名を記入したが、転出証明書には戸籍筆頭者として遠藤馨名が記載されていたことが同出張所の職員に指摘され、控訴人は、右転入届下欄の戸籍筆頭者名が真実である旨主張して、両者の押問答がなされたが、結局控訴人は、同職員らの指示に従って下欄の右記載部分を転出証明書の記載どおりに改めるに至ったこと、しかして、控訴人は、同年五月二日同出張所に対して住民票の右筆頭者名を再び遠藤一之に改めることおよび本籍地名の一字加入を求めた更正申立書を戸籍謄本添付のうえ提出し、同出張所においてこれを受理したことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

3  ところで、右転入届である甲第三号証によれば、現在右届の上欄の控訴人の住所名に方書が記載されていることが認められるところ、右方書が記載された日時について、控訴人は、転入届のあった四月三〇日と、被控訴人は、更正申出書の提出された五月二日とそれぞれ主張が対立するので検討するに、先ず、控訴人の住民票である乙第一二号証の筆頭者の氏名欄に先ず遠藤馨名が記載された後、馨名から一之名に訂正されていることが認められるから、右住民票は、四月三〇日に控訴人が筆頭者名を一之名から馨名に訂正したのち(四月三〇日ないし、五月二日)同出張所の職員によって作成され、また、右更正申出書の内容に従って、五月二日以後再び馨名から一之名に訂正されたことが認められる。次に、転入届である甲第三号証によると、その下欄の筆頭者名が遠藤一之名から馨名に訂正されている(四月三〇日の前記経緯のとおり)ままで、その後右更正申出書に従った再訂正のなされていないことを認めることができる。右の事実関係によれば、転入届提出の折控訴人と音羽出張所の職員が四月三〇日に最も対立した点は転入届下欄と転出証明書に記載された筆頭者名についてであり、控訴人は五月二日にその点を真実に符合させるため更正申出書を提出し、住民票も右申出書のとおり訂正されたものである。およそ、右申出書はその表題が示すとおり、住民票の記載自体を更正する書面と認められるから、その申出書が提出された際住民票の更正のほかに、併せてその基礎となった転入届書の記載まで、訂正すべきものであるか、また実際に訂正されたものであるか、大いに疑いなきを得ない。かりに転入届の訂正にまで及んだとしたならば、同出張所の係職員としては、強い関心を有していたところの肝心の転入届下欄の筆頭者名の訂正をすることなく、その上欄の住所名にそもそも申出事項にもなかった“方書”をのみ加入したとみることは甚だ不自然であるというべきであり、一方≪証拠省略≫によれば、文京区雑司ヶ谷一二〇番地内には教育大学雑司ヶ谷分校寮のほか東大分院その他が存在し、住民が多いことから、同出張所の受付職員は、同所への転入届がなされた際に特に方書の記載の有無に注意し、それを欠く場合にはその附加を求める場合が多かったことが認められ、これらの事実に当審における控訴本人尋問の結果を併せると、控訴人は、四月三〇日転入届を提出した際に係の職員から右方書について問いただされ、自ら、本件方書を記入したが、下欄の新住所欄は方書を附さないままにしたものと認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。

4  しかして、音羽出張所の職員が右転入届下欄の記載部分を複写して転入通知書を作成し、これを板橋区長に送付したこと、従って、右通知書の控訴人の住所には方書がなかったことは当事者間に争いがない。

二1≪証拠省略≫によると、板橋区長は、昭和四一年六月一五日控訴人に対する昭和四一年度の特別区民税、都民税についての納税通知書を、郵便で発送したこと、しかしながら、その際、同区長は、控訴人の住所を同人提出にかかる転出証明書の記載によって調べたため、宛名を方書のない、文京区雑司ヶ谷一二〇番と記したのみであったため、同月二五日右郵便は返送されたこと、同区長は、その後控訴人の住所について、板橋区保管の住民票、および、本件転入通知書等を調査したが、控訴人が同年四月三〇日同区より右宛名の住所に転入したことのほかを知り得ず、結局、控訴人の住所が明らかでないと認め、同年九月一七日控訴人に対する右納税通知書を同区の掲示場に掲示することによって送達するに至ったことおよびその間に同区長から控訴人に対して督促状や催告状が発送され、また同区の帳簿にその旨記載されたことが認められる。この点に関して被控訴人は、控訴人が同年五月二六日から方書地に居住せず、転居先についても明らかでなかったから仮に納税通知を方書を記した宛名で郵送しても結局返送された旨主張するが、≪証拠省略≫によると、控訴人が同年六月六日に教育大雑司ヶ谷分校寮で退寮処分を受けたことが、また、≪証拠省略≫によると、音羽出張所職員小塩充が控訴人の居住関係を調査した結果、同年六月三〇日現在転居先を知り得なかったことがそれぞれ認められるものの、≪証拠省略≫によると、控訴人は、右退寮処分後も同所に居住し、同年七月二三日から八月二九日までの間は渋谷区内の宿泊所に居住したが、その間も控訴人宛の郵便物は手許に届くように手続をなしていたことが推認される。したがって、被控訴人の右主張は採用し得ない。

2 次に、≪証拠省略≫によると、板橋区が控訴人に対して課した前記地方税は合計二八四〇円であり、昭和四一年六月三〇日までを第一期とし、以後四期に四等分された納税期限が定められているが、同月一七日から七月一五日までの間に右全額を納付したときは、同区から七〇円の報奨金が支払われることになっていたこと、控訴人としては、もし、納税通知を六月一七日頃受取り、かつ、七月一五日までの間に完納していたならば、右報奨金を受取ったであろうことが認められる。

三1  そこで、進んで、控訴人の主張する損害について検討する。

控訴人は、公示送達手続がなされたことおよび板橋区の帳簿に督促状や催告状を発送した旨が記載されたことによりそれぞれ名誉を毀損された旨主張するが、前者について考えると、右手続により被送達者の名が板橋区役所備付の掲示場に公示されることの法律的意味は書類送達の一方法がとられたという手続的意義があるに過ぎず、またその対社会的意味について考えても、単に同区長らにおいて、納税通知が当人届出もしくは調査にかかる住所宛に発送したがその方法では送達し得なかったという事実が明らかにされているに過ぎず、それ以上に当人に対する社会的評価を加えたものではなく、また右手続の目的も新聞や雑誌等に記載される記事と異り、不特定多数に読まれ、理解、論評されることにあるのではなく、専ら、法規の定める擬制により手続を追行させ、速かに課税処分を行なうことにあり、このことからすれば、右手続のなされたことによる世人の当人に対する評価は、当人の社会的立場、当時置かれていた状況等により多少の差はあり得るにせよ、他に特別の事情の加わらないかぎり通常は被送達者の名誉を侵害するに至るものではないと考えられる。また、後者については、それは、単に板橋区役所の納税事務担当者間の事務処理上行なわれる内部的手続であり、本来外部の目に触れることを予定したものではないのであるから、これにより控訴人を侮辱するとか、同人に対する社会的評価が影響を受ける性質のものではないというべきである。そうして右特別の事情の存在は本件においては認められないから、右公示送達手続や板橋区の帳簿になされた記載によって控訴人が名誉を害されたということはできない。

2  次に、七〇円の報奨金は、前記の如く、納税者が税金を一定の期間内に完納した場合にこれを受領することができるのであるから、完納する機会を奪われることによりそれを受領し得なかったことを損害として把えることは可能である。しかしながら、右報奨金制度は、本来板橋区が徴税事務をより速かに遂行せんことを目的として作られたものであり、納税者の利益を直接の目的としたものでないことは明らかであることに鑑みると、一般的に言って、右報奨金を失うことの質的意味は、通常の逸失利益に比して損害としては稀薄なものと理解される。

また、≪証拠省略≫によると、控訴人は、板橋区に対して昭和四一年度の納税申告書を提出していたのにもかかわらず、同年一一月二四日に至って初めて公示送達により同区から控訴人に対して納税通知書が発せられていることを知ったことが認められ、このことによっても、控訴人自身同年度の納税について必ずしも強い関心を有していなかったことが窺われるから、控訴人が報奨金を得る機会を失ったとはいえ、控訴人が当然報奨金を受け得たのにこれを失ったものとして因果関係を認めるには、資料が十分でない。

かりに上叙「損害発生」の点を積極に解し、かつ音羽出張所の職員が転入通知書を作成した際、転入届の上欄と下欄の控訴人の住所についての照合を怠ったか、もしくは下欄に方書を補充しなかった点に、仮に過失が認められるとしても、板橋区長から控訴人に対する郵便による納税通知書が不送達に終った前記経緯からみるに、控訴人が納税通知書の送付を受けられなくなったそもそもの原因は控訴人自らが造り出していることが認められる。控訴人は、転出届を提出する際は板橋区の職員に指示され、転入届を提出する際は音羽出張所の職員から強請された結果、方書を記入しなかった旨主張するが、≪証拠省略≫によると、却って、控訴人は、自らの判断により意識的に右方書を記入しなかったことが認められ、右主張は理由がない。

前記事実関係に照らすと、控訴人は、右の如き自らの落度を顧ることなく、多数の事務処理のうちには時に起り易いささいな被告の職員の落度のみをとりあげたうえ、僅少の逸失報奨金の支払を求めるものであって、その請求は、健全なる社会人としての常識を逸脱し、権利の濫用にあたるものといわざるを得ない。

四  したがって、控訴人の本訴請求に理由を認めることができないので、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安井章 裁判官 岩垂正起 裁判官加茂紀久男は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 安井章)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例